鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
お互いを名字で呼び合い敬語で話しているが、仕事だという意識が強いので違和感はない。

「山城社長の仰った数値ですが、もう少し下げた方が売りやすいです。具体的な部分は、これから詰めていきましょう」

「せっかく経営者同士が同じテーブルに着いていますので、大まかな目標値だけでも決めておきませんか?」

せっかちに問いかけると、昴がにこやかに返す。

「毎日、同じテーブルに着いているじゃありませんか」

「え?」

「続きは自宅のダイニングテーブルで、みそ汁を飲みながら。それでどうでしょう?」

絢乃が目を丸くすると、ドッと笑いがおきた。

彼のユーモラスな言動はきっと今日だけではないのだろう。

立花リアルエステイト側の社員たちが少しも驚いていないのがその証拠だ。

自社の社員たちも笑っているが、チラチラと絢乃の機嫌を窺うように見てくる。

「そうしましょうか」と絢乃が答えると、やっと肩の力を抜いたように笑った。

(昴さんの柔らかい対応、羨ましいわ)

自分の場合は社員に舐められるだけだと思うので真似できない。

甘い顔をするなと父に言われるのも必至だった。

それから十分ほどして、いい雰囲気のまま会議は終了した。

会議室から出ていこうとしている相手企業の社員たちと握手を交わす。

昴とも軽く握手して手を離したが、今度は違和感を覚えた。

(あっさりしすぎて変な気分ね)

昴が夫婦であるのをネタに笑いを取るから、完全に仕事モードでいられなくなった。

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