鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「それはどうかしら? 社にとってあなたが負債になると判断したら、不採用を決めると思うわ。会長がなにより大切にしているのはこの会社なの。唯華じゃないわ」

唯華が睨むように絢乃を見てから、ふてくされたように目を逸らした。

反論されるかと思ったが、父の一番の宝は会社だと唯華も感じていたようだ。

その時、ドアがノックされてハッとした。

(営業部の部長を呼び出していたんだったわ)

午後の外出までに確認しておきたい案件があるので、この時間に社長室に来るように今朝メールしておいたのだ。

それを失念して唯華を先に呼び出してしまった。

インターン中は真面目に働くと約束させていないので、まだ唯華を帰せない。

このまま待っているよう指示をして、絢乃が廊下に出た。

「ごくろうさま」

「あの、時間を改めますか?」

室内で誰かと話していたのがわかったようで、営業部の部長に気を使われた。

「いいえ、今を逃すと時間がないの。悪いけどここで聞かせてもらうわ」

機密事項ではないのでその点は廊下でも構わない。

二三、質問をして返答に対して指示をしている最中に、室内から電話のコール音が聞こえた。

自分がもうひとり、いやもうふたり欲しいほどの忙しさだ。

次の会議の開始時間も迫っているため電話を取るのは諦めて、廊下での話を優先させた。

コール音が五回鳴ってやんだあと、数分して営業部の部長を帰した。

疲れのため息をついて社長室に戻るなり、ギョッとする。

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