鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
執務机にお尻を半分のせた格好の唯華が、受話器を持っているのだ。

「電話を勝手に取ったの!?」

社外からなら一大事だ。

唯華のことだから、ぞんざいな口ぶりで失礼な発言をするに決まっている。

慌てて駆け寄ると、唯華が鼻で笑って受話器を置いた。

「お姉ちゃんに放ったらかされてるから帰っていいかパパに聞こうとしただけよ。鳴っていた電話は切れたわ」

(よかった……)

ホッと息をついてから、厳しい目を向ける。

「このデスク上にあるのは経営に関わる重要なものばかりなのよ。絶対に触らないで。電話もよ」

執務机から離そうと腕を掴んだが、手を払われた。

「なによ、えらそうに。いばっていればいいなら、私にだって社長が務まるわ」

「バカ言わないで。唯華にまかせたら潰れるわよ」

社長がどんな仕事をしているのか、唯華に話したところで理解できないだろう。

そんなことよりインターン期間中は真面目に働くと約束させなければ。

そう思ったが、唯華が勝手にドアへ向かう。

「待ちなさい。話は終わってないわ。インターン生という立場をわきまえて――」

「事業部のチクり魔に、生理痛がひどいから帰るって言っておいて」

手荒くドアが閉められた。

ひとりになった絢乃は額を押さえたが、なんとか気持ちを立て直そうとする。

(私が言っても聞かないのはわかっていたことよ。この件も含めて評価すればいいわ)

一昨日、昴に意見された父は苦渋の顔で唸っていた。

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