鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「お義父さんに前々から聞きたかったんです。絢乃には幼少期から厳しくされていたそうですが、姉妹で愛情に差をつけたのはなぜでしょうか?」

自分のために聞いてくれたのだと思うが、遠慮も配慮もない言い方に驚いた。

愛情に差があるとまで指摘しなくてもいいのではと思っていると、焦ったように父が立ち上がった。

「それは誤解だ。絢乃は幼い頃から賢かった。後継者になれると思ったから教育に力を入れたんだ。唯華は勉強がからきしだったからな。愛嬌があればいい結婚ができて将来の心配はないと考えた。思うようには育たなかったが」

父親としてふたりとも同じように愛していると言われるよりは納得できる説明だが、心に響かない。

(今さらどうでもいい話よ)

自分だけ愛されていないと苦しんだ子供時代には戻れないし、覇気のない父を追い詰めたくもない。

「もういいのよ。その話はやめましょう。お父さん、今日は出席してくれてありがとう。贈ってくれた入口の花輪も嬉しいわ」

それで幕を引こうとしたが、父が終わらせてくれなかった。

「これだけはわかってくれ。絢乃は大切な娘だ。なにもかも間違いだらけの私の人生の中で、会社の設立と絢乃を後継者にしたことだけは成功だったと自負している。不器用な人間だから愛情を伝えるのが下手で、つらい思いをさせてすまなかった」

初めて父に頭を下げられた。

(お父さん、こんなに小さかったかしら?)

頭頂部の髪は薄くなっており、引退して痩せたのかスーツが少し大きめだ。

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