鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
一度目は黒焦げで捨てるしかなく、二度目はスクランブルエッグになり、三度目は皿に移す段階で崩れた。

卵を使い切って後がなくなった四度目で、やっとオムレツと呼べそうなものが完成した。

それを昴用にして、自分のは崩れたものにする。

ここまで四十分もかかってしまい、急いでサラダに取りかかる。

厚切りになってしまったキュウリとレタス、ミニトマトをサラダボウルに盛りつけ、和風ドレッシングを手作りする。

(醤油適量、黒胡椒お好みでって、また曖昧な書き方。初心者に優しくないレシピね)

それでも混ぜるだけなので簡単だと思ったが、味見をして顔をしかめた。

(かなりしょっぱい。ということは、オムレツも?)

悪い予感は的中し、自分の分の失敗作を味見して急いで水を飲んだ。

(こんなの、あげられない。お礼じゃなく嫌がらせになるわ)

時刻は間もなく七時になる。

昴が起きてこないうちに急いでキッチンを片づけようとしたが、リビングのドアが開いてしまった。

部屋着姿で前髪に寝癖がついていても、彼のルックスのよさは損なわれていない。

「絢乃さん、おはよう」

「おはよう。もう少し寝ていてもよかったんじゃない……?」

「八時に出るって、昨日言ったよね?」

「そ、そうだったかしら」

「ん? 俺のエプロン着てどうしたの?」

キッチンに歩み寄った昴に料理を見られてしまった。

「俺の分も作ってくれたんだ。驚いたよ。ありがとう」

嬉しそうに目を細めた彼に、バツの悪い思いで白状する。

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