鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
『こういうのが好きそう』という昴の読みはあたっていたようで、両手に食材を抱えた絢乃の顔には自然な笑みが浮かんでいた。



翌朝、六時半に起床した絢乃は身支度を整えてリビングに入った。

スイッチを押してカーテンを開けると、開口の広い窓から眩しい日差しが入り込む。

今日は土曜だが、気になる案件があるため午後から出社予定だ。

昴も仕事が入っていて、自宅を出る時間は八時頃と聞いている。

遠方の新店舗の視察で泊まりになるらしい。

彼より早起きしたのは、昨夜のたこ焼きのお礼にふたり分の朝食を作ろうと思ったからだ。

(楽しませてもらったから、私もなにかしないと)

受けた恩はなるべく早く返したい性分だ。

エプロンを持っていないので、昨日彼が使ってキッチンに置いてあったものを借りた。

少し大きいが着られないほどではない。

タブレットで検索したのはプレーンオムレツと和風ドレッシングのサラダのレシピで、それを見ながら食材を出す。

(簡単そうよね。これなら私でも作れるはず)

そう思って作り始めたが――。

(塩少々ってどのくらい? 曖昧な書き方はやめてよ)

絢乃の自炊経験はトーストを焼いたりカップスープを作ったり、冷凍スパゲッティを温めたりする程度だ。

料理のレシピを読んだのも、子供の頃の家庭科の授業以来である。

それでも卵を割って溶いて焼くだけなら自分でもできると思ったのだが、オムレツは散々な出来栄えになってしまった。

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