イケメンIT社長に求婚されました ―からだ目当て?……なのに、溺愛が止まりません!―

第6話 この恋に、最終解答を

「──それ、葉山の感情をベースにしてるらしいよ」

その言葉を聞いた瞬間、
心臓がどくんと跳ねた。

昼休み、社内カフェの隅。
Velvetの開発チームがこぼした雑談が、偶然耳に入った。

「……感情?」

「うん。初期学習データに、葉山が個人的に書いた大量の『恋愛対話プロンプト』が使われてたって。
あの人、元カノから『思ったのと違う』って何度も言われたって話、知ってる?」

「……まさか、それがAIに?」

「そう。君がほしいって口調、あれ全部、葉山の感情的な会話ログがもとだって」

 

まるで心を見透かされたようだった。

──Velvetが、あのとき言ったこと。

《選ばれなかったって思ってる? それ、すごくもったいない発想だね》

《期待ってのは、誰かにされるもんじゃない。
自分がどうしたいかを決めた人間にだけ、結果がついてくるんだよ》

あのトーン。あの言葉選び。

どこかで「似てる」と思っていた。
けれど、本当に──社長そのものだったなんて。

 

Velvetを開いて、過去のやりとりを見返す。

まるで、彼自身が画面越しに語っていたような、
あの、熱を含んだ言葉たち。

そのひとつひとつが、
いま胸に突き刺さってくる。

「……わたし、全然わかってなかったんだ」

あれほど近くにいたのに。
あれほど気持ちをぶつけてくれたのに。

私は、何度も逃げて、疑って、
そして──あの人を傷つけた。

 

でも今なら、
ちゃんと、向き合える気がする。

言葉で、態度で、ぶつかってきたあの人の不器用さを、
もう一度、見つめ直せる気がする。

(──伝えたい。あの人に)

心が、ようやく前に向いた。

そう思えたときだった。

 

「望月さん」

水野さんが、穏やかな声で私を呼んだ。

「顔色……少しよくなった?」

「え……?」

「最近、ずっと苦しそうだったから。
でも今は、何かを決めた顔をしてる」

 

わかってくれる。
この人は、何も言わなくても私の変化に気づいてくれる。

私は、静かにうなずいた。

「……はい。やっと、ひとつ整理がついた気がします」

「それは、よかった」

それだけ言って、水野さんはコーヒーをひとくち飲んだ。

「……言いたいことがあったんですけど。
やめておきます」

「……え?」

「それは、望月さんが『誰を選ぶか』をちゃんと決めたときに聞きます」

やさしい笑みだった。

そのまなざしに、思わず胸がじんと熱くなる。
 

「ありがとう、水野さん」

「俺は、そばにいるだけです。……最後まで」

その最後がどんな意味かは、
きっとお互いわかっていた。

 

──でもその夜、私は思いもよらぬ通知を受け取る。

【派遣契約終了のご案内】──

目の前が、真っ白になった。
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