酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
席に着くと、店員が持ってきたおしぼりを手にしながら、花夏がすぐに話を切り出す。

「で? 取材どうなの?」

奈緒は箸を持ちつつ、少し笑って答えた。

「すごく順調だよ。今日も昼食中に通報入ってさ、交番でお弁当食べてたら無線が鳴って……ほんとにリアルだった」

花夏は「うんうん」と頷きながらも、どこか物足りなさそうな顔をする。

「まあ、それはいいんだけどさ」

──来たな。と奈緒は心の中でつぶやく。
花夏が本当に聞きたいのは、やっぱり瀬戸とのこと。

奈緒は焼き鳥を一串手に取って、小さく息を吐いた。

「瀬戸さんもね、格好よかったよ。警察官としての真剣な表情を、合法的に近距離で見られるんだから……もう最高だよ。一日中、胸キュンしっぱなしだった」

花夏はその言葉に目を輝かせながら、ウキウキとした声で言う。

「やばいじゃんそれ、ドラマじゃん。で? で? 何か進展は?」

奈緒は少しだけ目線を落とし、つぶやくように話し出した。

「……でもね、お昼にさ、お弁当持ってきてたの。しかもすっごく綺麗に詰めてあって……」

花夏は箸を止めて、真剣な顔になる。
「え、それって……」

「指輪はしてなかった。でも、もしかしたら彼女がいるか、あるいは……結婚してるかも」

奈緒はのらりくらりと答えるように言った。

花夏は数秒考え込んだあと、「うわ、まじか……」と呟いた。

「……でもさ、それって確認しないとモヤモヤするよね」

奈緒はあきれたように笑った。

「いやいや、聞けるわけないでしょ。仕事中だし、取材相手だし……」

「まあ、そうなんだけどさ。なんか、間接的に確認する方法ってないかなぁ……」

花夏はビールを一口飲んだあと、指を折りながらアイディアを出し始めた。

「例えばさ、雑談中に『私、最近お弁当作るのハマってて〜』とか言って、向こうのリアクション見るとか?」

「それで『僕も毎日お弁当なんです』って返されたら、作ってくれてる人の存在が匂う……ってことね」

「そうそう。あと、『お弁当って、自分で作る派ですか?』って、わざとらしくない程度に聞くのもアリ」

「うーん……でも、ちょっと勇気いるなぁ」

「だったら、他の警察官にそれとなく探り入れるのもアリよ。広報の中島さんとか、杉崎さんとか、あの辺の人って絶対何か知ってる」

「いやいや、それも怖すぎるって……」

「じゃあ最後の手段、SNS!」

「それが一番難易度高いわ……」

2人の会話は焼き鳥を片手に、どこまでも女子高生の恋バナのように続いた。

奈緒はふと、笑いながらも心のどこかに、どうしても拭えない不安があるのを感じていた。
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