酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
スマホを耳に当てた瞬間、懐かしくて落ち着く声がふわりと響いた。

「お疲れさま。初日、どうだった?」

瀬戸の声はいつもより少し優しくて、労わるように響いた。
 
「うん、大丈夫だった。緊張したけど、なんとか……」
奈緒の声が自然とやわらいでいくのを、自分でも感じた。

「慣れるまでは大変だろうけど、無理しないで。焦らなくていいからね」

その一言が、疲れた心の芯まで染みた。
「ありがとう。拓真くんも、異動してどう?」

「まだ慣れないけど、こっちは夜勤がないし、月曜から金曜まで定時で帰れるから。
奈緒とたくさん会えるなって、それが一番嬉しい」

「……うん」
照れくさくて、でも嬉しくて、奈緒は小さく笑った。

「今すぐにでも会いたいんだけど……今日は我慢する」
低く落ち着いた声に、どこか切なさがにじんでいた。

「……私も。会いたいって思ってばっかり」

その言葉が自然にこぼれた瞬間、ふたりの間に静かで甘い時間が流れた。

「またデートしたいな。前みたいに……」
奈緒の声は小さくて、でも確かな願いがこもっていた。

「うん、しよう。もっといろんなところにも行きたいし、
会えなかった時間を少しずつ取り戻そうね」

「……うん」

スマホ越しの距離がもどかしくて、でも心だけは近くにいるように感じた。

切なさと期待が入り混じった夜。

ふたりはそれぞれの部屋で、同じ気持ちを胸に眠りにつこうとしていた。
< 176 / 204 >

この作品をシェア

pagetop