酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
帰りの電車に揺られながら、奈緒はスマホの画面を何度も見つめた。

表示されていたのは、拓真からの短いメッセージ。

「初日どうだった? 大丈夫そう?
夜、時間あったら電話しよう」

たったそれだけなのに、胸の奥の糸がふわりとほどけるような感覚になった。

今日一日張りつめていたものが、ゆっくりと溶けていく。

霞ヶ関のどこかで、拓真が仕事をしている。

すぐそばにいるわけじゃないけれど、同じ空気を吸っていると思うと、それだけで随分と心強かった。

駅に着き、アパートまでの道を歩きながら、頬が自然とゆるんでしまう。

明かりのついた家の窓、静かな住宅街のにおい。

いつもと変わらない景色なのに、少しだけ世界がやさしく見えた。

部屋に入ると、ジャケットを脱ぎながら小さく深呼吸した。
「やっと、終わった……」

緊張と集中のせいで食欲もなかったが、瀬戸との電話を思うと、自然と元気が戻ってくる。

ソファに沈みながらスマホを手に取り、「今、帰宅しました」と打って送信。

まだ一日しか経っていないのに、すでに彼の声が恋しいと思った。

それは、少し前までの自分には考えられない感情だった。

シャワーを浴びる前に、スマホが鳴った。
表示された名前に、奈緒は嬉しさと緊張で胸が高鳴るのを感じた。
< 175 / 204 >

この作品をシェア

pagetop