酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
ご飯を食べ終わると、拓真は静かに立ち上がり、奈緒の横にしゃがみ込む。

「そろそろお帰りの時間ですよ、お姫様」
優しく言うと、奈緒は唇を尖らせて「嫌、帰らない」と頑なに主張した。

拓真は苦笑しながら、後ろからそっと抱きしめる。
「家、すぐそこでしょ?また明日きて」

耳元で囁くと、奈緒は小さく震えて「嫌。キスしてくれるまで帰らない」と拗ねたように言った。

――やっぱり酒癖悪いな、と思う。
「ダダこねないの。飲んだら百発百中こうなるの?」と問うと、
奈緒は目を潤ませながら「なる」と頷いた。

「じゃあ、お酒は禁止だね」
そう言うと、即座に「いや!酔ってないもん」と説得力のない否定が返ってくる。

少し困ったように笑いながら、拓真はその矛盾だらけの彼女を愛おしく思った。

この人の笑顔をずっと守っていけたらいい。
そんな願いが、ふと胸の奥からこぼれ落ちる。

静かに声を落として、「その顔、誰にも見せるなよ」と囁いた。
奈緒は黙り込んだまま、ふわりと頬を赤く染めていた。

やがて外に出ると、春の風がふたりの間をすり抜けていく。
徒歩8分ほどの距離を、言葉少なに歩く。手は自然に繋がれていた。

「案外、家近かったね」
拓真が笑って言うと、奈緒は「運命だもん、私たち」と言ってくしゃりと笑った。

その笑顔にまた胸がきゅっとなる。
手を繋いだまま、奈緒の家の前まで送り届けた。

玄関の前で見送ると、奈緒は名残惜しそうに振り返りながら、何度も手を振った。

――この時間が、ずっと続けばいいのに。
拓真はそう思いながら、静かにその背中を見送った。
< 186 / 204 >

この作品をシェア

pagetop