酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
夜、奈緒は新宿駅で待ち合わせた花夏と合流し、いつもの居酒屋「鶏政」へ向かった。
駅前の喧騒を抜けて、赤ちょうちんの下で軽く笑い合う。

「奈緒ーっ!」
花夏は満面の笑みで駆け寄ってきて、開口一番、奈緒の腕に抱きついた。

「ほんとにほんとに会いたかった!」
「ちょっと、落ち着いて。周り見て、会社帰りの人ばっかりだよ」

そう言いながらも、奈緒もつい頬が緩んでいた。

鶏政に入ると、二人はいつものカウンター席へ。
店内は少し賑やかで、仕事終わりの客のざわめきが心地よいBGMになっていた。

「相変わらず、この店落ち着くよね」
花夏がそう言ってメニューを開くと、奈緒は笑って頷いた。

「ここ来ると、いろんな取材の帰り思い出す」
「ね。私なんてもう“奈緒ロス”だよ。報告会のとき、なんか椅子がスカスカして寂しいの」

「椅子のせいじゃないでしょ」
奈緒がクスッと笑うと、花夏も笑いながら、冷えたレモンサワーを注文した。

焼き鳥と鶏の唐揚げ、ポテトサラダなど、定番の料理が次々と並ぶ。
「東京日報どう? 順調そうに見えるけど」
「うん、なんとか。都庁の人たちって意外と人情味があるし、勉強になることも多い」

「それにしてもさ……本当に、瀬戸さんと付き合ってるなんて。何その少女漫画展開」
「……あんまり言わないでよ。こっちがまだ慣れてないんだから」

顔を赤らめる奈緒に、花夏はいたずらっぽく目を細めた。

「ふーん。じゃあ、ちゃんと甘やかしてもらってる?」
「……それは、まあ。たぶん、過保護気味かも」
「絶対そうだと思った!」

グラスを合わせて乾杯すると、二人の笑い声が店内に弾んだ。

花夏といると、昔の自分に戻ったような気がして、奈緒の肩からふっと力が抜けた。
仕事も恋も、ちょっとずつ前に進んでいる。
そう思える夜だった。
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