酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
都庁での業務が少しずつ軌道に乗り始めた頃、奈緒は新たなテーマとして「都内で急増する闇バイトの啓発」に関する企画を任された。

担当部署は東京都の生活文化局。

防犯や若者支援の一環として、警視庁と連携した啓発ポスターやSNSキャンペーンを行っており、奈緒はその広報戦略の取材と記事化を担当することになった。

午前中、庁舎19階の会議室で、都の職員と打ち合わせが行われた。
スーツ姿の担当課長が資料を広げながら語る。

「近年、“闇バイト”に高校生や大学生が巻き込まれる事案が急増しています。SNS上で“高収入・即日現金”といったワードで拡散され、実態は詐欺や運び屋……。最悪の場合、加害者側にされてしまう」

奈緒は真剣にペンを走らせながら、心の中で拓真の顔を思い浮かべていた。

——警察もきっと同じ現場を見てきた。被害を防ぐために、どうすれば届くか。

「今回は、若年層が日常的に利用するSNSに焦点を当てて、ショート動画やインスタ投稿風の啓発画像を制作中です。あと、警視庁とも連携して、駅構内に大型ポスターを掲出する予定です」

奈緒は一つひとつの言葉を丁寧にメモしながら、頭の中で記事構成を組み立てていく。

——硬すぎても若者には響かない。だけど軽すぎても、危機感が伝わらない。

打ち合わせ後、職員の案内で、庁内の広報室を見学させてもらった。

壁に貼られた啓発ポスターのラフ案に、奈緒は思わず足を止める。

《その“バイト”、犯罪です。》

目を引くコピーの下に、匿名のSNS投稿風のデザインが並ぶ。
現実と地続きの危険がそこにはあった。

「このキャッチコピー、警視庁の若い職員が考えたんですって」
職員がそう教えてくれた瞬間、奈緒はふと、拓真のことを思った。

——あの人も、同じように未来の誰かを守るために考えて、動いている。

帰り道、奈緒は取材メモを見つめながら、思った。

“伝える”という仕事は、きっと“守る”という仕事と隣り合わせにある。

もっと丁寧に、もっと深く。
伝える責任を感じながら、記事に向き合おうと心を決めた。
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