酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「今夜はやけに静かですね」
瀬戸拓真(せとたくま)は、交番を出て、夜の街に視線を向けた。

新宿・東口。

ネオンが瞬き、人の声と車の音が混ざり合うこの街は、決して完全に静かになることはない。

「静かに見えて、こういう夜こそ、何かあるんだよ」
先輩の川合(かわい)が、肩の無線を軽く叩きながら呟く。
「ほら、あそこ」

指差した先。

繁華街の路地に、しゃがみこんだまま動かない人影が見えた。

「また泥酔か…」
瀬戸はため息まじりに顔をしかめる。

この街では、酒に飲まれた人間が道端で眠ることは珍しくない。

酔って寝込んだまま財布を盗られたり、急性アルコール中毒で倒れたり。

それを防ぐのも、自分たちの役目のひとつ。

「瀬戸、一応行ってこい」
「了解です」
瀬戸は短く答え、人影のほうへ足を向けた。

近づくにつれて、それが女性だとわかった。
髪が長く、トレンチコートを羽織っている。

バッグが足元に転がっていて、完全に無防備な姿。

しゃがみこんで、まるで小さく丸まるように眠っているその姿に、瀬戸は眉をひそめた。
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