酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
週明けの月曜、午前10時。

奈緒は花夏とともに、赤羽駅から埼京線に乗って埼玉県内の住宅地へ向かっていた。

車窓から見える風景は、徐々に東京の雑多な町並みから、静かな住宅街の風情へと変わっていく。

「なんかさ、こういうのって地方紙っぽい取材で好きだなあ」と花夏が言った。

「うん、私も。最近、大きな事件ばかり追ってたから、こういう地域の動きって改めて大事だなって思う」

「でしょ? 地味だけど、生活に直結してるよね。うちの読者層って意外とこういう記事、じっくり読むし」

奈緒は頷きながら、バッグからノートとペンを取り出し、取材メモを再確認した。

地域住民、町内会長、交番の警察官、そして小学校のPTA会長。
今日は数人の関係者に話を聞く予定だった。

駅からバスに乗り換え、20分ほど。
二人は閑静な住宅街の入り口に降り立った。

小さな公園のベンチに、町内会長の佐藤が待っていた。
七十代半ばの快活な男性で、二人を見るとすぐに立ち上がって手を振った。

「水原さんと高木さん? よく来てくれました。今日はちょうど午後から、防犯パトロールの打ち合わせもあるので、ご案内しますよ」

「よろしくお願いします。町内会の方と直接お話できるの、楽しみにしてました」

そう言いながら、奈緒はふと周囲に目をやった。
どこか、懐かしさを感じる風景。

小さな一戸建てが並び、玄関先には花壇。

通学路には横断旗が立てられ、新聞配達員が自転車を押して通りすぎていった。

この町の空気に、何かが眠っている気がした。
まだ見えていない、何かが。
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