酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「お姉さん、起きてください」
瀬戸は、少し声のトーンを上げた。
周囲の騒音に負けないよう、はっきりとした声で呼びかける。

「ここで寝ちゃだめです。起きて」

すると――

ふわり。
彼女のまぶたが、ゆっくりと持ち上がった。
焦点の合っていない瞳が、瀬戸の顔をぼんやりと見つめる。

「……あれ……?」
かすれた声が、唇からこぼれる。
その顔が、ふっとゆるんで――

「……ふふ」
無防備に、笑った。
目尻を下げて、まるで夢の続きを見ているかのように。
酔っているとは思えないほど、優しく柔らかな笑顔だった。

瀬戸は、一瞬言葉を失った。
こんな状況で、笑うなんて。

「……起きたか」
心の中でそう呟きながらも、気を引き締め直す。
まだ油断はできない。
けれど確かに、彼女は今、生きていて、目の前で笑っていた。
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