酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
夜の風に、秋の匂いが混じっていた。
涼しさを越えて、朝晩は肌寒さすら感じられるようになってきた。

瀬戸と後輩の杉崎は、新宿の繁華街を並んでパトロールしていた。

ネオンの明かりが揺れる歩道には、酔って寝ている人がちらほら。

中には、低体温のリスクがある者もいるため、注意深く巡回していた。

「瀬戸さん、あれ……」
杉崎が指差した先には、コインパーキングの脇の歩道に、若い女性が倒れるように眠っていた。

黒いショルダーバッグが転がり、スマホがその横に落ちている。
スカートは捲れ、肌が露出したまま、四肢をだらしなく投げ出している。

瀬戸は顔をしかめると、「杉崎、声かけて。意識確認して」と指示を出した。

「はい」と頷いた杉崎が女性のそばにしゃがみ込み、声をかける。

瀬戸は自分が着ていたジャンパーを脱ぎ、スカートの上からそっとかけた。
冷えたアスファルトの上にそのまま寝かせておくには危険すぎた。

「お姉さん、大丈夫ですか? ここ、危ないですよ」
杉崎の呼びかけに、女性がうっすら目を開けた。

「だれぇ……イケメンじゃーん……。てか、なんで起こすの……」
呂律が怪しく、酒の匂いが強い。

「ねぇ、LINE交換しよーよぉ……。え、彼女いんの? いないでしょ? 絶対いないでしょ~?」

「お姉さん、立てますか?」と杉崎が困ったように笑いながら言うが、女性は腕を伸ばして杉崎の制服の裾を掴もうとする。

「ねぇねぇ、もっと話そ? ちょっとだけでいいからぁ……」

瀬戸はため息をつき、交番への移送と保護の手配をしながら、杉崎に「さっさと保護して、搬送頼む。寒さで倒れてからじゃ遅い」と言った。

「了解です」と杉崎が頷くも、女性はなおもしつこく絡んでいた。

酔って絡む女性の姿に、瀬戸の脳裏には一瞬、奈緒の顔がよぎった。
けれど、それはほんの一瞬のことだった。
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