酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
交番に戻ると、空気はすっかり静まり返っていた。
瀬戸は無言でデスクに座り、パソコンを立ち上げ、報告書作成に取り掛かる。

タイピングの音だけが室内に響く。

隣の机では、杉崎がしばらく書類と格闘していたが、ふいに手を止め、椅子にもたれたまま机に突っ伏した。

「先輩……もう俺、無理っす……力、出ないです……」

瀬戸は画面から目を離さず、肩越しに呆れた声で言った。
「今日の分、朝までに終わらなかったら残業確定だぞ。明日夕方まで帰れなくてもいいのか?」

杉崎は顔を伏せたまま、苦しげに唸った。
「ううぅ……先輩……コーヒー奢ってください……」

瀬戸は溜息まじりにポケットから小銭入れを取り出し、数枚の硬貨を取り出して机の端に置いた。

「ほら。これで生き返ってこい」

杉崎は顔を上げ、小銭を手に取ると、小さく頭を下げた。
「……ありがとうございます。もう少し頑張ります」

椅子をぎいっと引いて立ち上がり、交番のドアを出て、自販機の明かりに向かって歩いていく。

瀬戸は再びパソコンに目を戻し、報告書の続きを打ち始めた。
静かな夜の中で、再びキーボードの音が交番に響いた。
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