酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
本番の朝、会議室にはいつもとは違う張り詰めた空気が流れていた。

窓の外は曇天、雪の名残がビルの隙間に白く残っている。

立候補したのは、都丸愛を筆頭に、奈緒を含めた5人。
誰もが社会部で実績と信頼を積み上げてきた記者ばかりだ。

“プレゼンのために気合を入れてきました”というような、鋭いスーツと凛とした姿勢が並ぶ。

奈緒も、背筋を伸ばして席に座っていたが、膝の上の手は緊張でじっとりと汗をかいていた。

花夏が控えめに目配せをくれたが、奈緒はただ小さくうなずき返すのが精一杯だった。

会議室の前方、白いプロジェクタースクリーンに照明があたり、狩野が立ち上がって前に出る。

「このプレゼンで選ばれた人は、テレビ番組『TOKYOリアルタイム』の警察密着ドキュメンタリーの取材に同行することができます」

ざわめきが一瞬、空気に走った。
社内でも視聴率と影響力の高さで知られる番組だ。

「さらに、これに関する記事は、我が社の防犯特集として隔週の連載となります。責任も伴いますが、その分やりがいも大きいです」

静まり返る会議室に、狩野の声だけが響く。

「投票には、立候補者以外の社会部全員に加えて、報道部からも3名来てもらっています。公平性は担保されていると思ってください」

その場にいた記者たちはみな、息を詰めるようにして前を見つめていた。

「それでは、1人目。都丸さんから、お願いします」

凛とした音を立てて椅子を引き、都丸愛が前に立った。

自信に満ちたその背中を、奈緒は無言で見つめていた。
鼓動は早鐘のように打ち続け、手のひらの汗が指先まで冷たく感じた。

──あと、4人。私の番はもうすぐ。
奈緒は、震えそうになる呼吸をゆっくりと整えた。
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