酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
13時をすぎた頃。

奈緒は「行ってきます」とだけ言い残し、会社を出た。

誰にも気づかれないように、ふらつく足取りを気合いで真っ直ぐに整える。

自分の体調不良には、気づかないふりをして。

向かう先は、霞が関。
警視庁本部のサイバー犯罪対策課。
ビル群の間を縫うように歩きながら、奈緒は何度も胸元に入れた取材メモを確認した。

闇バイト──SNSを通じて若者を違法な犯罪に引き込む、今、最も社会的関心の高いテーマのひとつ。

警察としても重大な課題とされ、対策に本腰を入れ始めている。

その一環として、警察からの一方的な発信だけでなく、メディアと連携しての報道にも期待がかかっていた。

奈緒は事前に確認していた担当者の名前を思い出す。
──星崎さん。

深く息を吸って吐きながら、庁舎の自動ドアをくぐり抜ける。

高い天井と静かな空気に包まれたロビーに、コツンとヒールの音が響いた。

受付に向かい、記者証を提示する。
ほんのわずかに手が震えていることに、自分でも気づかないふりをした。
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