荒廃した世界で、君と非道を歩む
海に向かうため、次は電車ではなくバスに乗ると志筑は言った。この街のことなど何も知らない蘭は志筑の隣を歩くだけである。
しばらく志筑が向かう先についていくと、気がつけば繁華街から交通量の多い大通りに出ていた。
それから道なりに歩く。すると少しずつ目的のバス停が見えてきた。蘭が駆け出しバス停に近づくとその全貌が明らかになる。バス停は帰りの会社員や学生で行列になっていた。遅れてやって来た志筑は隣で「げ…」と不満げな声を上げる。
時間帯はちょうど帰宅ラッシュの時間で、バスで帰るのだろうサラリーマン達が先が見えないほどに並んでいた。
「仕方ないよ。我慢しよ」
「わあーってる」
志筑の心の中を読んだ蘭はそう彼に語り掛ける。不貞腐れた子供のように返事をした志筑は、蘭の手を引いて最後尾に並んだ。
最後尾に並ぶと同時に志筑は大きな溜息を吐く。表情は不機嫌極まりないといった様子だが、それでも固く繋がれた手が解けることは無い。
志筑の手の温もりが直に伝わってきて、蘭は独り戸惑いを隠せずにいた。骨ばった肉のほとんど着いていない細い手、この手で志筑は人を殺したナイフを握っていた。
今も志筑は誰かを殺そうと考えているのだろうか。もしそうなら、どうして自分は殺してもらえないのだろう。
他人を殺すくらいなら、もうナイフなんて握らなくていいように蘭はその手を強く握った。
急ぐ用事でもないため一本目のバスは見送り、後からやって来たバスに乗り込む。一本目でほとんどの人が乗り込んで行ったため、次に乗ったバスは比較的人が少なかった。
窓側の席に蘭が座り、その前に庇うようにして志筑が立った。蘭はまるでボディーガードみたいだなと思いつつ、その不器用な優しさに甘えていた。
二人が向かう海に一番近いバス停でも、ここから一時間近く掛かる。つかの間の落ちついた時間だ。ゆっくりと動き出したバスは少しずつ繁華街を離れていく。ごった返していた車内も各バス停に止まる毎に少しずつ人が減っていった。
目的のバス停に着く頃には、車内には蘭と志筑の二人だけになる。静かなバスの車内にアナウンスが鳴り響いた。
「降りるぞ」
料金を支払った志筑が先にバスを降り、運転手に小さく会釈した蘭も降りる。志筑が伸ばした手を握って地に足を着けると同時に磯の香りが鼻腔を擽った。
バスを下りると、すでに目の前には夕焼け空を反射するキラキラと輝く海があった。
「これが海!? すごい綺麗!」
「あっ、おい、あんまはしゃぐな」
年頃の女子である蘭相手に随分と子供らしいことを言ってしまったと思いつつ、浜辺に降り立って駆け出す蘭の後を追う。
浜辺に入れば、サクサクとした柔らかい砂の不思議な感触に身体が驚愕した。冬の海は冷える。コートのポケットに手を入れて押し寄せる潮風を全身で受ける。
真っ直ぐ海へと走っていく蘭の後ろ姿を眺めながら、ゆったりと浜辺を歩いた。
しばらく志筑が向かう先についていくと、気がつけば繁華街から交通量の多い大通りに出ていた。
それから道なりに歩く。すると少しずつ目的のバス停が見えてきた。蘭が駆け出しバス停に近づくとその全貌が明らかになる。バス停は帰りの会社員や学生で行列になっていた。遅れてやって来た志筑は隣で「げ…」と不満げな声を上げる。
時間帯はちょうど帰宅ラッシュの時間で、バスで帰るのだろうサラリーマン達が先が見えないほどに並んでいた。
「仕方ないよ。我慢しよ」
「わあーってる」
志筑の心の中を読んだ蘭はそう彼に語り掛ける。不貞腐れた子供のように返事をした志筑は、蘭の手を引いて最後尾に並んだ。
最後尾に並ぶと同時に志筑は大きな溜息を吐く。表情は不機嫌極まりないといった様子だが、それでも固く繋がれた手が解けることは無い。
志筑の手の温もりが直に伝わってきて、蘭は独り戸惑いを隠せずにいた。骨ばった肉のほとんど着いていない細い手、この手で志筑は人を殺したナイフを握っていた。
今も志筑は誰かを殺そうと考えているのだろうか。もしそうなら、どうして自分は殺してもらえないのだろう。
他人を殺すくらいなら、もうナイフなんて握らなくていいように蘭はその手を強く握った。
急ぐ用事でもないため一本目のバスは見送り、後からやって来たバスに乗り込む。一本目でほとんどの人が乗り込んで行ったため、次に乗ったバスは比較的人が少なかった。
窓側の席に蘭が座り、その前に庇うようにして志筑が立った。蘭はまるでボディーガードみたいだなと思いつつ、その不器用な優しさに甘えていた。
二人が向かう海に一番近いバス停でも、ここから一時間近く掛かる。つかの間の落ちついた時間だ。ゆっくりと動き出したバスは少しずつ繁華街を離れていく。ごった返していた車内も各バス停に止まる毎に少しずつ人が減っていった。
目的のバス停に着く頃には、車内には蘭と志筑の二人だけになる。静かなバスの車内にアナウンスが鳴り響いた。
「降りるぞ」
料金を支払った志筑が先にバスを降り、運転手に小さく会釈した蘭も降りる。志筑が伸ばした手を握って地に足を着けると同時に磯の香りが鼻腔を擽った。
バスを下りると、すでに目の前には夕焼け空を反射するキラキラと輝く海があった。
「これが海!? すごい綺麗!」
「あっ、おい、あんまはしゃぐな」
年頃の女子である蘭相手に随分と子供らしいことを言ってしまったと思いつつ、浜辺に降り立って駆け出す蘭の後を追う。
浜辺に入れば、サクサクとした柔らかい砂の不思議な感触に身体が驚愕した。冬の海は冷える。コートのポケットに手を入れて押し寄せる潮風を全身で受ける。
真っ直ぐ海へと走っていく蘭の後ろ姿を眺めながら、ゆったりと浜辺を歩いた。