魔法使い時々王子
お茶会が終わり、廊下を歩いていたときだった。

「……ほんと、やってられないわ」

聞き覚えのある声に、アリスは足を止めてしまう。

「ニーナ様が次期王妃になると思ってたから、今まで側にいたのに」

「もうニーナ様の近くにいる意味はないわ」

「今更アリス様に取り入る訳にもいかないし…」

声は低く、陰湿で、明確な本音だった。

アリスは物陰に立ったまま、何も言えずに聞いていた。

言葉の続きを言いかけた、そのとき。

「あなたたち」

澄んだ声が、空気を切った。

取り巻きの令嬢たちは、はっとして振り返る。

そこに立っていたのは、エレオノーラだった。
微笑みを浮かべてはいるが、その瞳は一切笑っていない。

「何か言いたいことがあるのなら、どうぞ。
わたくしに、おっしゃいなさい」

逃げ場のない静けさ。

令嬢たちは顔色を失い、慌てて頭を下げる。

「も、申し訳ございません!」
「軽率な発言でした!」

「そう」

エレオノーラはそれ以上責めることもなく、淡々と告げた。

「では、今後はお気をつけなさい」

それだけで十分だった。

取り巻きたちは互いに視線を交わし、逃げるようにその場を去っていく。

廊下には、再び静寂が戻った。

エレオノーラは、物陰にいるアリスの存在に気づいていた。
だが、何も言わない。

ただ一瞬だけ、大丈夫ですよとでも言うように、穏やかな視線を向けた。

アリスは小さく息を吸い、胸の奥のざわめきを押し込めた。
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