魔法使い時々王子
第二十一章 祈りは誰のために
ミロ王国では、年に一度の行事である星祈祭が迫っていた。

城下町はすでに祭りの支度で賑わい、王宮内も例外ではない。侍女たちは花や布を運び、神官たちは儀式の最終確認をし、庭では祭壇の設営が進められている。

その慌ただしい様子を眺めながらも、アリスはまだこの祭りの意味を実感しきれていなかった。

星祈祭がどのようなものか教えてくれたのは、アウルム図書館で隣に座っていたリトだった。

「星晶に感謝して、祈る日だよ。国があるのは星晶があるからだって」

淡々とした口調だったが、その言葉には揺るぎない確信があった。

王族は聖域の方角へ向かい祈りを捧げ、国民もそれぞれの場所で星に祈るという。それは祝祭であり、同時に信仰でもある。

――その星晶を、父は求めている。

胸の奥が、ひやりと冷えた。

王宮が祭りの準備で忙しなく動くなか、ただ一室だけは静まり返っていた。

セオが体調を崩し、寝込んでいるのだ。無理をして公務を続けていた反動だと医師は言っていた。

アリスは小さく息を吸い、セオの部屋へ向かう。

扉の前で一瞬だけ立ち止まった。

星祈祭はもうすぐだ。

そして星晶を巡る話もまた、静かに動き始めている。

胸のざわめきを押し隠し、アリスはそっと扉を叩いた。
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