魔法使い時々王子
翌日、アリスとリトはイスタリアからの使者が来るのを待っていた。

二人はいつものように、隠し扉から使者が訪れる予定の部屋を覗いている。

だが——

いくら待っても、使者の姿は現れなかった。

「……来ないな」

リトが小さくつぶやく。

しばらく粘ったが、結局その日は誰も現れなかった。

二人は諦めて図書館へ戻ることにした。

アウルム図書館へ戻ると、ノエルがすぐに二人の様子に気づいた。

「お帰りなさい。収穫はありましたか?」

リトは軽く首を振る。

「来なかった」

その一言で状況を察したのか、ノエルは少し考えるように視線を落とした。

「恐らく予定が変更されたのでしょうね」

「そんなことあるのか?」

「外交の予定は、直前で変わることも珍しくありません」

ノエルは穏やかに答える。

そして少しだけ声を落とした。

「正確な予定を知りたいのであれば……ある人物を訪ねるのがよろしいでしょう」

アリスとリトが同時に顔を上げる。

「王宮の記録係、マルグリットです」

「記録係?」

「はい。王宮に出入りする使節、会談、公式日程——そのすべてを記録している方です」

ノエルは微笑んだ。

「外交に関する予定を知るなら、彼女以上の人物はいません」
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