魔法使い時々王子
その時、不意にリトがアリスの手を引いた。

「……お腹空いた。腹ごしらえしよう」

そう言って、料理が並ぶテーブルの方へと歩き出す。

「もう、リトったら……」

アリスは小さく呟きながらも、そのまま一緒についていった。

——すると。

「まあ、リト」

柔らかな声が、背後からかかる。

振り返ると、エレノオーラが立っていた。

黒のドレスに、頭には猫耳。
さらに腰のあたりには、しなやかに揺れる尻尾。

その姿はどこか妖しく、しかしよく似合っていた。

「この舞踏会に参加するなんて、珍しいじゃない」

リトはちらりと視線だけを向けると——

「……別に」

素っ気なくそう言い、先を急ぐ。

アリスは軽く会釈をし、その後を追おうとした。

——その時。

「ねえ」

エレノオーラが、ふいにアリスの耳元へと顔を寄せた。

「あなた、不思議な人ね」

低く、やわらかな声。

「……リトの側にいてくれて、ありがとう」

そう囁くと、エレノオーラは意味ありげに微笑み、その場を後にした。

「……私って、不思議……?」

アリスは去っていく背中を見つめながら、小さく首を傾げる。
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