魔法使い時々王子
夜の喧騒が、遠くに霞む。

離れに建つ塔は、舞踏会の賑わいとは別世界のように静まり返っていた。

灯りは最小限。
石造りの壁に、淡い影が揺れている。

先に辿り着いたのは、アリスだった。

「……セオ?」

扉を押し開け、中へと足を踏み入れる。

だが、そこに人の気配はない。

静寂だけが、広がっていた。

「……?」

不思議に思いながら、ゆっくりと奥へ進む。

——その時。

背後で、静かに扉が開く音がした。

アリスは振り返る。

そこに立っていたのは——

仮面をつけた、一人の騎士。

黒を基調とした装い。
無駄のない佇まい。

一瞬、誰なのか分からない。

けれど——

なぜか、目が離せなかった。

騎士もまた、言葉を発さずに立ち尽くしている。

静かな空間に、二人の呼吸だけが重なる。
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