魔法使い時々王子
「……セオは、とてもいい人よ」

アリスは静かに言った。

「セオには昔から、愛し合っていた婚約者がいたの。でも……父が強引に、私との結婚を決めたの」

少しだけ言葉を区切り、息を整える。

「それでもセオは、私をあたたかく迎えてくれたわ」

そう言って、アリスはシドの腕の中からそっと離れた。

ゆっくりと窓辺へ歩み寄り、外の夜景へと視線を向ける。

「……星晶の件も、私が責任を負う必要はないって言ってくれた」

かすかに声が震える。

「私……もう、これ以上セオやこの国の人たちを苦しめたくない……」

ぽろり、と。

大きな瞳から涙がこぼれ落ちた。

一粒、また一粒と、止めることもできずに。

「……星祈祭に参加して、この国の人たちがどれだけ星晶を大切にしているか知れたわ」

アリスは涙を拭うこともせず、言葉を続ける。

「もし祖国が星晶を手に入れたら……私は、もうここにはいられない」

静かな夜の中に、その言葉だけが重く落ちた。

シドは何も言わず、ただ静かにその話を聞いていた。

やがて、ゆっくりと歩み寄り——

そっと、アリスの肩に手を置く。

「……国王陛下は、力尽くでも星晶を手に入れるつもりだ」

低く、はっきりとした声だった。

「実は……アリスの兄上——皇太子殿下から呼ばれて、ある提案を持ちかけられた」

その言葉に、アリスははっと顔を上げる。

「兄さんが……?」

シドは静かに頷いた。
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