魔法使い時々王子
翌日。

アリスはダリウスのために用意した客間を見て回っていた。

家具の配置や寝具に問題がないか確認し、最後に窓を開けて部屋に風を通す。

すると、ノックもそこそこにローズが入ってきた。

「お部屋の準備は終わったようね!」

ローズは部屋を見回すと満足そうに頷いた。

「ああ、ダリウス様がしばらく王宮にいてくださるなんて嬉しいわ!」

その様子にアリスは思わず苦笑する。

「本当に楽しみにしているのね」

「もちろんよ!」

ローズは胸を張った。

「ピクニックを計画しましょうか! それとも馬で遠乗り? 森の外れに大きな湖があったわよね。ボート遊びなんて素敵じゃないかしら!」

次から次へと楽しそうな計画を口にする。

アリスは微笑みながら聞いていた。

「楽しそうだけれど……できるかどうか分からないわ」

その言葉と共に、無意識に手を握りしめる。

イスタリアの建国記念日は明日だ。

数日間にわたって開かれる催しが終われば――。

恐らく、星晶の件でイスタリアから使者がやって来る。

そうなれば、もう猶予はない。

アリスは窓の外へ視線を向けた。

青空はどこまでも穏やかだった。

けれど、その向こうでは確実に何かが動き始めている。

「どうしたの、アリス?」

気づけばローズが心配そうに顔を覗き込んでいた。

アリスははっとする。

「え?」

「なんだか浮かない顔をしてる」

アリスは慌てて首を横に振った。

「……ううん。何でもないわ」

そう答えたものの、不安は胸の奥から消えてはくれなかった。
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