魔法使い時々王子
「……少し、時間をくれないか。」

長い沈黙の末、セオは静かにそう言った。

アリスは小さく頷く。

「ええ。」

そして、ゆっくりと言葉を続けた。

「どうやら、お父様は兄さんが何か企んでいることに気づいたみたいなの。そのせいで、今日予定されていたミロとの会談も急遽中止になったわ。…だから、少しだけ時間はできたの。」

アリスは穏やかな表情でセオを見つめる。

「セオ……よく考えてみて。話を聞いてくれて、ありがとう。」

そう言うと、アリスは静かに立ち上がり、執務室の扉へ向かった。

部屋を出ようとした、その時。

「……アリス。」

セオの声が背中を呼び止めた。

アリスは振り返る。

セオはしばらく言葉を探すように黙っていたが、やがて静かに口を開いた。

「どうか、一人で背負おうとしないでくれ。」

その言葉に、アリスは優しく微笑んだ。

「……ええ。」

小さく頷くと、今度こそ静かに部屋を後にした。

扉が閉まり、執務室には再び静寂が訪れる。

セオは机の上に置かれた書類へ目を落としたが、一文字も頭には入ってこなかった。
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