魔法使い時々王子
アリスは自室へ戻ると、大きく息を吐いた。

セオがどんな答えを出すのか――。

それはまだ分からない。

今は、信じて待つしかなかった。

アリスは机に向かい、羊皮紙を広げる。

そして、シドへ宛てて静かに手紙を書き始めた。

セオに計画をすべて打ち明けたこと。

少し時間が欲しいと言われたこと。

一つひとつ丁寧に書き記し、最後に名前を書いて手紙を折りたたむ。

ふと机の上を見ると、この間エミリーから預かった小さな笛が目に入った。

アリスは笛を手に取り、窓を開ける。

そして、静かに息を吹き込んだ。

不思議なことに、音は何も鳴らなかった。

「……これでいいのかしら。」

そう呟いた、その数分後だった。

バサバサッ――。

夜の静けさを破る羽音が聞こえる。

窓辺には、一羽の真っ白な鳩が舞い降りていた。

「アリス様。」

「エミリー……!」

アリスは思わず笑みを浮かべる。

「すごく速いのね。イスタリアからミロまで、かなり距離があるでしょう?」

エミリーは小さく首を傾げた。

「翼人は、普通の鳥よりも遥かに速く飛ぶことができるのです。長距離の伝令は、私たちの得意分野です。」

「なるほど。」

アリスは微笑み、折りたたんだ手紙をエミリーの脚に丁寧に結びつけた。

「確かに、お預かりいたしました。シド様へ、お届けいたします。」

そう言うと、エミリーは力強く羽ばたく。

白い翼は夜空へ溶け込むように遠ざかり、あっという間にその姿は見えなくなった。

アリスはしばらく窓辺に立ち、その背中を静かに見送っていた。
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