魔法使い時々王子
その晩。

アリスはローズとダリウスを見送り、自室へ戻ろうと廊下を歩いていた。

すると、前方からノエルが静かに歩いて来る。

「アリス様、こんばんは」

「こんばんは、ノエル」

挨拶を交わした、その瞬間だった。

――『美味しいお茶が飲みたくなったら、いつでも来てくださいな』

以前、ノエルを通して伝えられたアルシエラの言葉が、ふとアリスの脳裏によみがえる。

アリスは少しだけ躊躇い、それから意を決したように口を開いた。

「あの……美味しいお茶、飲めますか?」

ノエルは優しく微笑んだ。

「もちろんです」

静かに頷くと、ノエルは歩き出す。

アリスもその後ろをついて行った。

辿り着いたのは、セオの母であり、この国の王妃アルシエラの私室。

ノエルは扉の前で立ち止まると、軽く一礼し、ゆっくりと扉を開く。

「失礼いたします。アリス様をお連れしました」

部屋の奥では、アルシエラが椅子に腰掛け、窓の外へと静かな眼差しを向けていた。

その声に気づくと、ゆっくりと振り返る。

「いらっしゃい。」

アリスは部屋へ足を踏み入れると、深く頭を下げた。

「王妃様……」

少し緊張した面持ちのまま顔を上げる。
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