魔法使い時々王子
「今夜の舞踏会も参加するの?」

アリスが尋ねると、ローズはにっこりと笑って頷いた。

「もちろん!王宮にいて参加しない舞踏会なんてないわ!」

その隣で、ダリウスは深いため息をつく。

「……勘弁してくれ」

疲れがまだ抜けていない様子に、アリスは思わず小さく笑った。

「あ、ねぇ……あの話……」

不意に、ローズの声色が少しだけ落ちた。

先ほどまでの明るい表情は消え、そっとダリウスの顔を覗き込む。

「ああ」

ダリウスは短く答えると、真っ直ぐアリスを見た。

「どうしたの?」

アリスが首を傾げる。

「昨日、パーティーに参加した時に、ある話をしている人たちがいたの」

ローズは少し言いづらそうに続けた。

「……星晶のこと」

その言葉に、アリスの胸が大きく脈打つ。

「イスタリア国が星晶を求めていて、この国の王がそれを承諾する予定だって……そんな噂が広まっていたの」

「……もう、噂になってしまったのね」

アリスは静かに視線を落とした。

まだ何一つ決まっていない。

それなのに、人々の間では、まるで決定事項であるかのように語られている。

その事実が、胸を締めつけた。

「大丈夫か、アリス」

ダリウスが心配そうに声を掛ける。

アリスはゆっくりと顔を上げ、二人に微笑みかけた。

「……大丈夫よ」

そう答えたものの、その笑顔はどこか儚かった。

「少しだけ……部屋に戻っているわね」

そう言い残し、アリスは静かに踵を返した。
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