魔法使い時々王子
会場にいた者たちが、一斉にヴァルターへ視線を向けた。

「まさかとは思いますが……」

ヴァルターは国王を前にしても怯むことなく、言葉を続ける。

「イスタリアの言いなりとなり、星晶を渡すなどというお考えではありますまいな」

そのあまりにも直接的な物言いに、アリスは思わず息を呑んだ。

国王に対して、ここまで踏み込んだ発言をする者は多くない。

国王はヴァルターをしばらく見つめた後、静かに口を開いた。

「確かに、イスタリア王国から星晶についての申し入れはあった」

その言葉に、会場の空気が揺れる。

「しかし、まだ何も決まってはいない」

その一言に、あちらこちらからざわめきが起こった。

アリスは胸の前で、ぎゅっと手を握りしめる。

やはり……。

噂は、もうここまで広がっている。

「そうでしたか」

ヴァルターは低く呟いた。

「やはり、イスタリアは最初からそれが目的だったのですな」

その言葉に、隣にいた貴族の一人が首を傾げる。

「と、言いますと?」

ヴァルターはゆっくりと会場を見渡した。

「私は以前から疑問に思っておりました」

その視線が、まっすぐアリスへ向けられる。

「イスタリアのように、これまで我が国と深い関わりのなかった国が、突然王太子殿下へ縁談を申し込んでくるなど……あまりにも不自然ではないかと」

アリスはすぐに理解した。

これは、自分へ向けられた言葉だ。

胸の奥が冷たくなる。

ヴァルターの鋭い視線が突き刺さる。

「慣例に従い、この国をよく知る我々貴族の中から妃を選ぶべきだったのでは――」

ドォン!!

ヴァルターの言葉を遮るように、会場に大きな音が響いた。

何かが床へ打ち付けられた音。

それは、王太子の剣だった。
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