魔法使い時々王子
誰もが息を呑んだ。

セオは何も言わない。

ただ、鋭い視線でヴァルターを見つめていた。

その姿は、次期国王としての威厳そのものだった。

その時。

「……国王陛下が先ほど仰った通り、まだ何も決まっておりません」

静かな声が会場に響く。

アルシエラだった。

「今は、それだけです」

アルシエラはヴァルターを見つめる。

「本日は、遥々遠方より来てくださった皆様への感謝を伝えるための舞踏会です。そのような場で政治の話を持ち出すなど……無粋極まりないことではありませんか」

誰も言葉を発することができない。

「星晶の件については、然るべき時に、然るべき人材を集めて話し合うべきものです」

アルシエラは国王へ視線を向ける。

「そうですわね、国王陛下」

国王は静かに頷いた。

「その通りだ」

そしてヴァルターを見下ろす。

「各大臣、それに星晶に関する専門家たちを集め、すでに何度も話し合いを重ねている。そなたの心配は、有り難く受け取っておくとしよう」

ヴァルターは一瞬、言葉を失う。

しかし、すぐに口を開いた。

「しかしながら、そもそもイスタリアの姫を迎えたことが――」

「それ以上は許さない」

静かな声だった。

だが、その一言に会場全体が凍りついた。

セオだった。

「……」

セオはヴァルターを真っ直ぐ見据える。

その瞳には、王太子としての揺るぎない覚悟が宿っていた。

周囲から向けられる冷ややかな視線に、ようやく気づいたヴァルターは、ぎりっと拳を握り締める。

そして何も言わず、その場を後にした。

しばらく続いた沈黙を破るように、アルシエラが微笑む。

「さあ……音楽を」

その一言で、楽団が動き出す。

再び美しい旋律が会場に響き渡った。
< 417 / 425 >

この作品をシェア

pagetop