魔法使い時々王子
アリスは封筒を開け、ゆっくりと手紙を読み始めた。

そこには、昨晩の舞踏会のことが綴られていた。

どうやらニーナも、あの舞踏会に参加していたらしい。

ヴァルターが起こした騒動も、その場で目にしていたようだ。

アリスのことを心配して、こうして手紙を送ってくれたのだろう。

『あの場に居るのは、とても辛かったことでしょう。
それでも最後までその場を離れず、王太子妃として立派に振る舞っている姿を見て、驚きながらも感心しました』

手紙を読み終え、アリスは少し恥ずかしそうに俯いた。

「感心されることなんて何もしてないのに……」

それでも。

こうして自分のことを気に掛け、わざわざ手紙をくれたことが嬉しかった。

アリスは返事を書くことにした。

そして――ニーナにも、シドが立てた計画について話すことを決めた。

計画が成功したその時には、セオの側にいてほしい。

そう願いを綴った。

『こんなお願いをする資格が、私にあるのか分かりません。あなたから婚約者を奪った私が言うことではないと思っています。それでも……どうか、セオの側にいてあげてください』

アリスは何度も文章を読み返した。

そして最後まで書き終えると、ペンを置いた。

王室の郵便で送ることもできた。

けれど、今回は自分の手で確実に届けたかった。

アリスは引き出しから笛を取り出す。

そして、窓を開けて静かに吹いた。

ピィ――。

しばらくすると、空の彼方から一羽の白い鳩が飛んできた。

窓辺に降り立ったその姿を見て、アリスは微笑む。

「エミリー」

アリスは手紙をそっと差し出した。

「今日はシド宛ではない人に届けてほしいの。お願いできるかしら……?」

エミリーは小さく頷いた。

「必ず、お届けいたします」

そう言うと、エミリーは手紙を携えて空へ飛び立っていった。

アリスはその姿が見えなくなるまで、窓辺から見送った。
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