魔法使い時々王子
観客の歓声が、ひときわ大きくなった。
剣を弾かれたシドは立ち上がりこそしたが、反撃の隙はなかった。
鋭い一突きが胸元をかすめ、審判が旗を上げた瞬間――

「勝者、アルバ!」

決着がついた。

シドは深く息を吐きながら剣を下ろした。
アルバが近づき、手を差し出してくる。

「……悪かったな、つい本気になった」

「……当然だろ。試合だ」

二人は短く言葉を交わし、静かに握手をかわした。

シドは汗を拭きながら、ゆっくりと着替えていた。
勝敗が決まった今、会場の喧騒が遠く感じる。

ドアが開く音。

「おつかれ、シド」

振り返ると、アルバが立っていた。
試合後とは思えぬ爽やかな顔だ。手にはまだ、優勝の証の金のメダルがぶら下がっていた。

「最後どうしたんだ、お前……まさか、俺に勝たせるために調子を――」

「違う。」

シドは即座に首を振った。

「……単純に、俺の実力不足だった。それだけだ」

アルバの目が、少し驚いたように見開かれた。
だがすぐに笑みを浮かべる。

「そうか。なら……ありがたく、勝たせてもらう」

「優勝、おめでとう。……本当に、強かったよ」

それだけ言って、シドは静かにその場を後にした。

アルバはその背を見送ったまま、しばし無言だった。
そして一人つぶやく。

「……やっぱり、ただの魔法使いじゃないよな。あいつ」
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