その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
◇◇◇◇

二日後、病院の正面玄関をくぐったときから、澪の肩は自然とこわばっていた。
白く清潔な廊下は何度か訪れたときと同じはずなのに、今日はどこか違って見える。

時おりすれ違う看護師や医師たちの視線が、微妙に痛い。彼らからすれば澪は蒼林大学病院の人間ではないし、医療従事者でもない。
それが第一外科の天才外科医と並んで歩いてるのだから、不思議がられてもおかしくなかった。

副院長室の前まで来たところで、真澄が立ち止まる。

 「緊張してる?」
 「……わかりますか?」
 「澪は表情に出やすいからな」

 淡く笑った真澄の声に、少しだけ気持ちが和らいだ。

 「大丈夫。気を張る必要なんてない」
 「でも、大学病院ってやっぱり独特の空気ですね。緊張します」
 「すぐに終わらせる。そうしたら二人でコーヒーでも飲もう」

 たったそれだけの言葉だったのに、胸の奥がふっと軽くなる。
 この人が隣りにいてくれるなら、大丈夫かもしれない。

 澪は小さく頷くと、副院長室のドアに目を向けた。

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