その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています

第十章 記録と記憶の中の答え(真澄/澪Side)

 「……調べてみる」

 そう言った瞬間、澪の目がわずかに揺れた。
 心配も期待も、怖さも入り混じったようなその眼差しを見つめながら、真澄は静かに息を吸った。

 このまま何も知らないふりをして、やり過ごすこともできた。澪が信じてくれるならそれだけでいい、と言い聞かせることもできた。
 けれど、鷹野の話が引っかかっていた。

 あのときの手術の裏で、『誰かの死』を引き起こした可能性があるのだとしたら。

 そんなふうに考えたことは、これまで一度もなかった。

 けれど今――その誰かが、自分の妻になってくれた大切な人かもしれない。

 それでもなお、言葉を震わせながら「信じたい」と告げてくれた。そして自分のこと以上に、真澄の気持ちや肩書きのことを心配をしている。

 だったら、自分も向き合わなければならない。
 自分自身がこの事実を知らずに生きていくことのほうが、よほど残酷だった。

 「分かったら、どんな結果であっても必ず話す。だから少しだけ待っていてほしい」

 そうだけ静かに告げて、真澄は澪の手を一度だけ優しく握った。

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