その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 澪はソファの横に置いたバッグに手を伸ばし、小さな封筒を膝の上に置く。
 
 「今日、真澄さんに言われた通り病院に行ってきたよ」
 「そうだ、どうだった?検査結果は?」

 「妊娠してたんだ」

 真澄の表情が、明らかに一瞬止まった。
 瞬きさえ忘れたようにただ澪を見つめ続けている。

 「あれ?固まってる?」

 何か言おうと口を開きかけては、言葉にならずにすぐ閉じてしまう。
 その繰り返しに、真澄の動揺が手に取るように伝わってくるようで、澪まで緊張してきてしまった。

 「……え、病院って…体調悪いって言ってたの、そういう――……え!?」

 普段の冷静さはどこへやら、思考が完全に混乱して反応が追いついていない。こんなに動揺する姿を見るのは、結婚以来初めてかもしれなかった。

 その様子に、澪はくすっと笑って肩をすくめる。

 「この体調不良の理由までは、見抜けなかった?」

 悪戯っぽく笑うと、真澄がソファに深くもたれ込んだ。

 「……いや、完全にノーマークだった…食欲ないとか貧血気味っていうからてっきり内科系の何かだと…あぁ、でもそうか、、」

 そういうことか、と苦笑しながら額に手を当てている。おそらくこれまでのいろいろなことが今、ようやく点と線で繋がったみたいだった。

 そんな真澄を見て、愛しさが胸いっぱいに広がっていく。
 
 澪は封筒の中からエコー写真を取り出した。
 まだ白黒のかすかな影。けれどこのお腹に宿っている――確かな命のかたち。

 「ここが心臓なんだって。もう動いてたよ、音も聞かせてもらったの」

 真澄は少しだけ震える手で写真を手にすると、じっと見つめている。
 そのまま何も言わず、しばらく動かなかった。

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