その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「よく分かった。そういう事情なら入籍は早いほうがいいな」

 拍子抜けするほどあっさりと返されて、澪は瞬きをする。

 「えっ、あの、本当にいいんですか?」
 「なにが?」
 「だから…この結婚は柊木さんにだけ有利に働くものじゃないってことです。たとえ契約でも、婚姻関係になれば私の家族の問題が柊木さんに及ぶかもしれません」

 真澄は軽く肘をつくと、テーブル越しに澪を見つめてくる。その目がどこまでもまっすぐで、澪は思わず視線を伏せた。

 「それで?」
 「あの……契約を解消したいときは、話し合って決めるっておっしゃいましたよね?もし少しでも引っかかることがあるのなら……」

 ぎゅっと両手を膝の上で握る。

 「この契約、なかったことにしていただいて構いません。私じゃなくて他の方を――」
 「他の誰かにするつもりはない」

 澪の言葉は言い終わる前に遮られた。

 「この前も言ったように、この話は君だから頼んだんだ。君でなければ意味がない」

 まるで自分がいい、と言われているように錯覚して、澪は顔が熱くなる。

 (違う、これは告白でもプロポーズでもないのに…)

 整った顔でこうもストレートに言われてしまうと、胸が高鳴るのを抑えられなかった。

 
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