その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「……なんだ、怖気づいたか?」
 「…っ、違います!そんなことは、」

 少し口角を上げた表情は明らかに澪をからかっていて、思わず声を上げてしまった。

 真澄はときどきこういう表情をする。年上の余裕とでもいうのだろうか。自分の反応さえ見透かされているようで悔しかったが、どうにもならなかった。

 「なら、それでいい」

 コツ、と指で契約書を軽く叩くようにして彼は言った。

 「お互いにとって必要だった。その上で信頼して選んだ相手ということだ」
 「……はい」
 「じゃあ、サインを」

 促されて、澪は契約書と婚姻届に名前を記入する。

 「これで契約成立だな」

 そう言って薄く微笑んだ真澄の表情が満足げに見えたのは、澪の気のせいだったかもしれない。

 「挨拶や入籍の日取りは後で決めるとして――出会いや交際期間についても、あらかじめ打ち合わせしておく必要があるな」
 「……はい??」

 (何それ、どういうこと?)

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