その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 ◇◇◇◇

 「というわけで…結婚することになりました」
 「……えぇえっ!?」

 その日の夜。
 夕食後に食器を片付ける手を止めて打ち明けると、キッチンでひよりの絶叫が響いた。

 「け、けけ結婚!?え、プロポーズされたの!?っていうか彼氏いたの!?」

 (うん、まぁ…そうなるよね…)

 元カレとは三年前にすっぱり別れた。それ以来誰とも付き合っていなかったし、最近はもっぱらひよりの恋バナの聞き役だったなのに、いきなり結婚報告。この反応は当然と言えば当然だ。

 「まぁ、ちょっと落ち着いて」
 「落ち着けるわけないでしょうが!ちょっとおばあちゃーん!!」

 バタバタとリビングに引っ張られて、そのまま座らされる。対面の座椅子に座った祖母は、湯呑みを持ったまま目を丸くしていた。

 「あらあら…で、お相手はどういう方なの?」
 「蒼林大学病院の、脳外科に勤務してる先生」
 「ねえねえ顔は?イケメン?」
 「ひよりってば!」

 相変わらずな調子のひよりにはため息が出る。すると、そっと湯呑みを置いた祖母が澪を見た。

 「病院のことは……瑞恵(みずえ)さんのことはもう大丈夫なの?」

 蒼林は五年前に母が息を引き取った病院。
 それ以来、蒼林の話題はどことなく避けていたことも、きっと気づいていたに違いない。

 (おばあちゃんは、私のことを心配してくれているんだ…)

 「うん、それは全然大丈夫だよ。真面目で誠実な人だし、すごく信頼されてるお医者さんなの」

 それは澪の本心だった。
 澪は頷いてから、安心させるように微笑む。

 「それで、近いうちに挨拶に来たいって言ってくれてるの。おばあちゃんと、ひよりにも会いたいって」
 「あらまあ、それは楽しみだねえ。もちろん私は大歓迎だよ」
 「わぁ結婚の挨拶なんてドラマみたい!ドキドキする~!」
 「もう、ひよりは絶対変なこと言わないでよ?」
 「はいはい分かってまーす」

 軽口を叩き合いながら、賑やかに時間が過ぎていく。
 この家族の時間を守りたい。

 (そのために、前を向くって決めたんだから)

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