その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「じゃあ私、そこまでお見送りしてくるね」

 二時間ほど家で過ごしたあと、近くまで送っていくという名目で一緒に家を出た。
 だんだんと家の明かりが背後に小さくなっていく。二人並んで歩いていると、夕方の風が肌に心地よかった。

 「…何とか無事終わりましたね」
 「二人とも温かい人だったな。あの空気ならあまり構える必要はなかった」
 「そう言ってもらえて私も安心しました」

 少しだけ緊張が解けた空気の中で、澪はふと思い出して口を開いた。

 「次は真澄さんのご実家ですね」
 「いや、うちの両親は今シンガポールにいる」
 「……え、シンガポール……?」
 「そう。父が五十代で早期リタイアして、今は母と二人で悠々自適に海外生活中だ。意外と向こうの気候や食べ物が合うらしくてすっかり定住してる」

 ほら、といってスマートフォンで写真を見せてくれた。そこには、シンガポールの高層ビル群を背景に、やや日焼けした真澄の両親が笑顔で映っている。

 (何だかすごいセレブ感……!)

 「だから挨拶はテレビ電話で構わない。まさか現地まで行くわけにもいかないしな」

 「そ、そうですね……」

 これはさすがに予想外すぎた。本当にいろんな意味でスケールが違う、と澪は思わず笑いがこぼれてしまう。

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