その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「つけ心地は?」と聞かれて、澪は指先に視線を落とした。

 「……はい、とてもいいです。でもちょっと私には華やかすぎて……」

 その指輪の煌めきが、自分の価値に見合ってない気がして気後れしてしまう。本当は誰か別の人のものを、間違えてはめてしまっているみたいな。

 「医者の妻になったら、パーティーや式典に同伴することもある。そういう場ではこういった指輪をつけていないほうがかえって目立つ」
 「そ、そうなんですか…?」
 「つけていない=見劣りするっていう、あからさまな空気だってある。俺自身はどう見られようが気にしないが、君が軽んじられるのは気に入らない」
 「でも…」

 澪が言い連ねようとした瞬間、真澄がすっと身を寄せてくる。
 すぐ耳元の、二人だけに聞こえる距離。

 「……君は、俺の妻になる契約をしただろう?」

 静かなのに熱量を帯びた声に、肌がぞわっと震えた。

 「だったら――俺の妻としてちゃんと装ってもらわないと」
 「……っ」

 息が詰まりそうだった。
 視線も熱も、そしてその声も、すべてが澪の素肌に触れてくるようで。

 ただ顔が熱くて、バクバクと自分の心臓の音がすぐ近くで聞こえる。

 (そこまで言われたら、もう……)

 「……これが、いいです」

 そう言った瞬間、薬指の指輪が静かに輝いた気がした。
 今までで一番――眩しく、美しく。

 真澄が満足げに頷くと、ごく当然のように澪の手を取る。重ねられた二つの指輪を眺めて、ふっと、優しい声で呟いた。

 「これでどこから見ても、ちゃんと夫婦に見えるな」

 その言葉に、澪の鼓動がまた一段と速くなる。
 契約だからと割り切っていたのに。

 (どうして、そんなに本物みたいな言い方をするんですか…?)

< 43 / 127 >

この作品をシェア

pagetop