その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「なっ…!?急になんですか…!?」
 「そうやって拗ねるところ。しっかりしているところばかり見ていたから、意外だった」

 真澄は立ち上がると、仕事用の鞄を開けて黒いリングケースを取り出す。カチリと蓋を開けて指輪を薬指にはめた。

 「これでいいか?」

 真澄が澪の手を取ると、重なる指の上で二つのリングが光る。

 「これからは家でも忘れずにつける。澪が不公平だと思わないように」

 そう言って微笑む目が驚くほど優しくて、視線が合わせられない。耳の先がじんわりと熱を持ち始めて、顔まで赤くなっていくのが自分でも分かる。

 「……私、記憶力いい方なので約束覚えてますからね?」

 精一杯の強がりのつもりで言うと、真澄はにやりと笑った。

 「知ってる。品番まで暗記してたくらいだからな」
 「それは仕事です!」
 「ああ。そういう真面目なところも気に入ってる」

 からかい半分の口調なのに、どこか本気のようにも聞こえて。
 思わず視線を伏せたそのとき――ゆっくり髪を撫でられた。

 「ちゃんと、妻の望みを叶えられる夫でいたいと思っているからな」

 (この人は―――)

 「……そういうこと、さらっと言えちゃうんですね」
 「契約条項に書いておくべきだったか?」
 「そんなの書かれても困ります…っ」
 「とりあえず奥さんの機嫌が直ったようでよかった」

 機嫌が悪かったつもりなんてなかったのに、そう言われると何も言い返せない。でも確かに、さっきまでくすぶっていたモヤモヤはどこかへ消えていた。

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