その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「ほら、喋ってると間違えるぞ」
 「あっ!?あれ、なんか変にねじれてる?」

 解いてはやり直しを何度か繰り返して、ようやくそれらしい形に落ち着いた。やっぱり結び目は少し歪んでいるけれど、自分にしては上出来だと思う。

 (…まぁ、これも新婚らしさってことで許してもらおう)

 「ちょっと時間はかかったが、初めてにしては悪くない」
 「社交辞令でも嬉しいです」
 「いや、本気で言ってる」

 そう言って真澄は、残りのコーヒーを口に含みながらふと視線をこちらに向ける。

 「最近、顔色がいいな」
 「え?」
 「目の充血もないし、唇の血色も肌の状態もいい。最初に会ったころとは雲泥の差だ」

 そうやって、また診断みたいなことを言い始める。

 「睡眠時間が安定して規則正しい生活になったからだろう。栄養面も整ってる」

 「…その、結婚生活のおかげみたいな言い方、やめてください」
 「妻の健康管理は夫の務めだ」

 淡々と言ってのける真澄に、澪は思わず眉をひそめる。

 「こういうの慣れません」
 「なら慣れてくれ」

 冗談めかした口調に、軽く微笑む真澄。
 そのままふと思い出したように、仕事用の鞄から手帳を取り出した。

 「そうだ、妻といえば――」

 ページをめくりながら、何気なく口を開く。

 「来月、ボストンへの出張がある」

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