その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 ◇◇◇◇

 そしてやってきた週末の午後。
 都内の落ち着いたエリアにある高級ドレスショップ。

 (こんなところに来るの、初めてかも……)

 上品な雰囲気と柔らかな照明に満たされた店内には、華やかなドレスや男性用のタキシードが並んでいた。

 「予約をしていた柊木です」
 「お待ちしておりました。奥様もどうぞこちらへ」

 奥様、という言葉につい反応してしまう。間違ってはいないけれど、他人からはそう認識されているんだと改めて実感して気恥ずかしかった。
 そして案内されたのは、店内の奥にある半個室のフィッティングルームだった。

 「そんなに緊張するな。俺以外誰も見てない」

 (それが一番緊張するんですってば…!)

 相変わらず落ち着き払ったままの真澄が恨めしい。

 「ドレスをお探しとのことですが、パーティーなどでしょうか?」

 澪は一瞬戸惑ってから、小さく頷く。

 「はい。パーティーに同伴するんですが、どういうのがいいのか分からなくて……」
 「会場は海外ですが、格式はそこまで厳しくないと思います。妻は初めての同伴なので、動きやすさと華やかさを両立できるものだと助かります」

 真澄が自然と言葉を継ぐと、店員はかしこまりましたとプロの笑みを浮かべる。

 「では、お客様のお好みと雰囲気に合わせて、いくつかご提案させていただきますね」

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