その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 「とてもお似合いです。お客様の肌色にもブルーが映えていて……でも、もう少し柔らかな印象のカラーも試されてみますか?」

 店員がまるで助け舟を出すように声をかける。

 「は、はいっ、お願いします…」

 (このままじゃ心臓もたない……!)

 その後、二着目三着目と試していくうちに、少しずつ緊張もほどけてきた。そして、ピンクゴールドの刺繍が施された柔らかなドレスを選んで、澪はそっと試着室のカーテンを開けた。

 真澄がこちらに視線を向ける。

 「……ああ、それいいな」

 その声があまりに自然で、優しくて。
 評価でも、からかいでもなく、ただ澪自身を見てこぼれた言葉だった。

 「……似合ってますか?」

 「すごく。さっきのも良かったけど、これが一番似合っている」

 そして澪もまた、鏡に映る自分を見てこれがいいな、と思っていたのだ。華美すぎず、でも地味でもなくて、ほんの少しだけ背伸びをしたような――そんな一着。

 「俺たち趣味が合うな」

 真澄のどこか熱っぽい視線を受け止めきれなくて、澪はまた頬が熱くなる。

 (そんなふうに見つめないでほしい…)

 たとえ契約の夫婦だったとしても――湧き上がった胸のときめきは否定できなかった。

< 55 / 127 >

この作品をシェア

pagetop