その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 顔の火照りがなかなかひかないまま、澪はメイクブースに案内される。
 
 「お客様はお肌がとてもきれいなので、ナチュラルでもとても素敵ですが、パーティーでは華やかな方が印象になりますよ」
 「は、はい。お願いします……」
 「ドレスのお色に合わせるなら、アイシャドウは――」

 プロの手さばきに身を任せながら、少しずつ鏡の中の自分が変わっていくのを眺めていると、メイク担当の店員がふと笑顔で話しかけてくる。

 「ご主人様と、すごく仲がよろしいんですね」
 「……えっ!?」

 思わず変な声が出てしまった。

 「別にそんなんじゃ…!あ、ですみません、騒がしかったですよね?」

 鏡越しに目が合って、澪はまたしても頬を熱くする。

 「いいえ、素敵なご主人様で羨ましいです」

 (きっとこの店員さんは、私が愛されてる奥さんだと思ってるんだろうな…)

 まさか利害が一致しただけの契約結婚をした夫婦だとは思わないだろう。

 「ありがとうございます」

 ほんの少し胸がちくりと痛むのを、澪は気付かないふりをして微笑んだ。

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