その天才外科医は甘すぎる~契約結婚のはずが溺愛されています
 メイク体験を終えて真澄の元へ戻ると、すでにカウンターのそばで店員とやりとりを終えていた。

 「お客様、こちらお品物でございます」
 「え…っ?あの、お会計は…」
 「全部済ませた。そろそろ行くか」

 さりげなく財布へカードをしまう真澄を、澪はぽかんと見つめる。

 「ちょ、ちょっと待ってください! 私、支払いますから!」
 「いや、いい。ほら行くぞ」

 そのままさりげなく手を引かれて、笑顔の店員に送り出されるかたちでお店を後にしてしまった。

 「そんな、私が着るものなのに…」

 生活費はほとんど真澄持ちだが、自分が使うものに関しては自分の財布から出す。そういう取り決めだったはずなのに。

 「ガラディナーに出てもらうための準備だ。学会への同伴なんだし必要経費だろ」

 そう言って、軽く腕を引き寄せられる。

 「よく似合ってた」

 そのひとことで、また顔が熱くなる。

 今日は何回、心拍数が跳ね上がっただろう。
 澪は袋をぎゅっと抱きしめたまま、小さくうつむいた。

 「そういえばメイク戻したのか?」
 「はい、さすがに今の服だと浮いちゃうので……」
 「そうか。じゃあ当日を楽しみにしておく」

 そう言って微笑む真澄は、どこから見ても誰もが羨む『旦那さん』だった。

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